薄氷を割ってしまった名経営者

流通の雄、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長が2016年4月7日、引退発表した。

同氏は、流通業というくくりの中で、セブン-イレブンを始めとする実績で知られる

日本屈指の名経営者だ。

ところが、自らの人事案を諮ったところ、取締役会で否決され、

退任にいたったというのが顛末である。

人生終盤にさしかかった83歳の鈴木氏には3つの選択肢が存在しただろう。

・A:まだまだ会長職として一線で辣腕を振るう

→これは、自身も意気軒昂だったので、本人が望んでいたことであろう

・B:自ら勇退し、悠々自適。各企業の顧問に落ち着く

引き手あまたであろうし、ノウハウを執筆すれば、名実ともに

語り継がれる経営者となったであろう

・C:不本意な形で、引責する

→残念ながら、1番引きたくないカードを引いてしまった。

 

引退を決める引き金となったのは自らが提案した新人事案の否決である。

では、これほどまで影響力が強かった彼の案が、なぜ否決になったのであろうか?

1つには、取締役兼CIOにいる息子の存在がある。

鈴木氏は否定するが、世襲のための人事布石と映り、取締役の「信」を

得られなかったのは間違いないだろう。

ここで、注目すべきは、否決に至った背景だ。

取締役決議において、過半数に達しないことで否決、ひいては引退という

決断につながった。決議は、15名中の過半数に達することで可決になる。

否決の詳細は、実は、賛成7・反対6と賛成が過半数に達した。

しかし、白票が2名いたため、賛成は過半数に至らなかったのである。

賛成票率は、46.6%でわずか3.4%足りなかったのだ。

3.4%というか、白票の1人が賛成に投じれば、過半数に達したので可決になった可能性が強い。

そうすれば、引退ではなく、上記選択肢Aのまだまだ影響力を

発揮するポストについていただろう。

つまり、天国(選択肢A)と地獄(選択肢B)の境目は、

取締役のわずか1票だったということだ。

流通業へこれだけ大きな足跡を残した巨人が、

最後にわずか1票で晩節を汚すことになってしまったのである。

ここから学習できることとして、世襲経営の難しさや

人心への細心さ、意思決定システムの怖さなどがあるだろうが、

やはり「引き際の難しさ」が大きな学習点だ。

彼ほどの高齢になるまで、私にはまだまだ時間があるが、

プロジェクトへの関与、マンネリ感漂う仕事への

関与に、どう区切りをつけつかということの

難しさは常に感じる。

教訓として、活かしていきたい。

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